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友達のしるし

名古屋市立守山小学校 5年
青山みのり
主人公とユキちゃんの気持ちのすれ違いがとても丁寧に書かれています。時間の経過や季節の表現と心の揺れ動きを重ねる表現がきれいです。離れ離れになってしまった2人を繋ぐタイムカプセルがより2人の絆を深める。ケンカをした事で、この2人は大人になってもずっと仲良しでいるんだろうなと思います。心の交流がとても瑞々しく美しいと思います。きちんと謝る、謝ろうとする姿が見てて嬉しいです。
(ながおたくま)
 「ない!ない!」
私は、タイムカプセルを一生けん命探した。それは、保育園を卒園する時にユキと公園の木の下にうめたものだ。小学五年生、私たちがちょうど十才の四月にほりおこす約束をした。私とユキは、保育園のころ、ずっと同じクラスだったので、とても仲の良い友達になった。しかし、小学三年生の時だった。ユキは遠い学校に転校することが決まった。なので、私とユキは文通をし、お互いの出来事を知らせて、近くにいなくても二人のきずなを深め合っていた。それから一年が経ち、約束の年の四月がせまってきた。三月にユキから、しばらく行けそうにないので、タイムカプセルをほっておいてほしい、と手紙がきた。ブランコの近くの木の下にうめたよね、と書いてあったので、四月に入ると、私はそれを目印に探し始めた。しかし、私はもぐらのようにたくさん土をほりまくったが、どこにもない。いくら探してもタイムカプセルはでてこない。私は、ユキの悲しむ顔を見たくなかったので、しばらく手紙を出せなかっ
た。今年の春はくもりが続いてどんよりとしているせいか、さくらもまださかず寒い日が続いている。
 数日後、ユキから電話がかかってきた。
「まだ見つからないの?そんなに見つける気がないなら、探さなくていいよ。」
「私だって一生けん命探しているよ。なのにそんな言い方するなんてひどい。」
モヤッとしたふんい気に包まれて、電話はそこで終わってしまった。一度もケンカをしたことのないユキと初めてケンカ別れをしてしまったのだ。私は悲しくて、ずっと部屋にとじこもって探すのをあきらめた。外はあたたかくなって、さくらが満開になった。皆はとてもうれしそうだったけれど、私はちっともうれしくなんかなかった。大切な友達との大切な思い出がどんどん消されていくようだ。それから一週間後、ユキから手紙がとどいた。私はこわかったので、ゆっくりとふうとうを開けた。
「ごめんね。部屋を探したら、うめた場所をかいた地図が見つかったの。ブランコではなくて、すべり台の近くの木の下にうめたみたい。私もかんちがいしていたのに、あんな言い方をして本当にごめんなさい。」
私は、急いでくつをはき、スコップを持って走って公園に向かった。公園の入口にふんわりと散っていたさくらの花びらがまい上がった。私は、すべり台の近くにある、もうほとんど花が散ってしまったさくらの木の下をほった。カチンッ。タイムカプセルが見つかった。ふたを開けて、中に入っている手紙を取り出した。書いてあったことは別々だけど、最後の一文だけ同じだった。
「ずっとずっとともだちだよ。」
すぐにユキに知らせよう。私の心は、おそざきのさくらの花がさきほこり、満開になっていた。