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金棒泥棒

名古屋市立長良中学校 1年
髙倉 紘希
最初の数行で読者の興味をつかんで離さない奇想天外な設定です。タイトルもですが、おじいさんが金棒を泥棒してしまうという新鮮で斬新なはじまりでありながら、淡々とユーモラスに描いていくので、おもわず引き込まれて読んでしまいます。おじいさんや鬼の心情がよく伝わるので、面白さが格別です。べつのお話だという「桃太郎」も独自の視点で書かれた作品をぜひ読んでみたいと思わせました。
(藤 真知子)
 昔々あるところに、おじいさんとおばあさんがいました。おじいさんは山へしばかりに、おばあさんは川へ洗濯をしに行きました。おじいさんが山でしばを刈っていると、大きく細長く黒光りした岩のようなものがあったのです。気になったおじいさんが近づいてみるとなんとびっくり、鬼の金棒だったのです。しかし金棒をおじいさんは見たことがないので、「これは何だろうなぁ」と思ったのですが、不思議な形で宝物なのではと考え、家に持って帰ることにしました。
その数十分後、山でドングリや果物などの食料を取っていた鬼が帰ってきました。鬼はいつも金棒を持ち歩いていましたが、木の実の採集に使わないだろうと思い置いておきました。だがもう帰るので、と金棒を取りに行きましたが見つかりません。そりゃあそうです。だっておじいさんが持っていってしまったのだから。しかしそのことを知らない鬼は必死に探しました。次の日も、その次の日も、鬼は探しました。しかし見つかりません。だっておじいさんが持っていってしまったのだから。鬼は仲間を呼んで探し始めましたが草の根かき分け探しても見つかりません。おじいさんが持っていったせいで、鬼は悲しみで泣いてしまいました。泣いて泣いて泣きじゃくった後、人間さんたちなら知っているのでは、と考えたのです。そこで鬼は金棒について知っている人を探すために、人間さんの町に訪れました。
町に着いた鬼は金棒を知っている人がいないか、と町の人たちに声をかけていったのですがみんなおびえて声も出せません。それでも聞きこみをしていた鬼ですが、「怖いから」という理由で町から追い出されてしまったのでした。鬼はその時、金棒は人間さんが盗んだのでは、と思いましたが人間さんがそんなことするわけ無いだろう、と考えなおしました。
 その数年後、おばあさんが川で洗濯をしていると、上流からどんぶらこ、どんぶらこと柿が流れてきました。おばあさんが家に持ち帰り柿を割ってみると、中から子供が出てきたのです。おじいさんとおばあさんは「柿太郎」と名付け大切に育てました。するとすくすく育ち、「鬼退治に行きたい」と言い出しました。それを知ったおじいさんは家の宝、金棒を取り出し、
「柿太郎や、この棒は重く、ずっしりとしており鬼退治をするには最適だと思うのだ。鬼退治に行くならこの棒を持っていきなさい。」
と言い柿太郎に金棒を持たせ、旅に行かせたのでした。
旅の途中で三匹の仲間をつれた柿太郎が鬼ヶ島に到着した時、鬼たちはその姿を見て怒りました。数年前に無くしたかと思っていた金棒を持った人間が、現れたからです。鬼はそれはそれは怒りました。怒り狂った鬼は顔を真っ赤にさせて柿太郎におそいかかりました。
乱闘の末に何とか金棒を取り返した鬼たち、乱闘の末に泣く泣く逃げ帰った柿太郎たち、鬼はこれまで無くしていた物も人間に盗まれたのではと思い、人間の町をおそっていきました。金品をうばい、女子供を連れさり、ありとあらゆる悪事を行いました。また金棒を盗まれたと子から子へ伝えていき、何世代にもわたって悪事を行い続けました。柿太郎は逃げ帰ったあとはのんびりと暮らし、きれいな妻を娶り、幸せに、そうおじいさんとおばあさんになるまでのんびり暮らしました。この後、おばあさんが拾った桃から生まてくる「桃太郎」が鬼退治に行くのはまた別のお話になるでしょう。