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ざんねんな怪盗

名古屋市立神の倉小学校 5年
柴垣ちなみ
「社会の大変さを勉強してきて」の結果が怪盗になることだなんて、ご両親はびっくりでしょうね。怪盗になったばかりなのに、いとも簡単に宝石を盗んでみせる天才児。でもカード投げが絶望的にセンスがないギャップがいい魅力です。もっとステキな怪盗になるための努力を惜しまない姿勢はいいですね。泥棒はダメですけど。
(ながおたくま)
朗読:まつもとのどか (試験管ベビー)
 ある日、突然事件は起きた。宝石店で一番値段が高い『シャイニングルビー』が盗まれた。それも泥棒ではなく、怪盗Aが盗んだらしい。この事件は新聞に大きく載せられた。この新聞を読んだ折原優美が怪盗に憧れ、怪盗Yになって活躍する時がやってきた!
 優美はお母さんに
「社会の大変さを勉強してきて。」
と言われたので今一人暮らしをしている。しかしあの事件の新聞を読んで怪盗は自由なのだと思い憧れた。
 まずは「〇〇はもらった‼」のカードのデザインから決めようと青いスペードの中に白色のYの文字が書かれたデザインにした。そして、変装道具を持って
「よし、初仕事だ。」
今日のターゲットは『幻の水晶』だ。宝石店の店長に変装し、さくっと盗み、カードを投げて帰ろうとしたら、
「あれっ?」
カードが変な方向に飛んでいった。
「まぁ、いっか。」
優美は運動神経が良いが投げる運動が全くダメで、すぐあきらめるし努力をしないから、スポーツテストのソフトボール投げでは地面に叩きつけて、記録は10㎝だった。だからカードも変な方向に飛んでいったのだ。
 そして次の日に新聞には、[怪盗Yあらわる!がカードは変な場所に]という見出しになっていた。優美は悔しかったが、やはりあきらめてこの事をおいておいた。
 また、ターゲットを盗むたびにカードは変な方向に飛んでいった。『マリン・サファイヤ』ではたなの後ろ、『ゴールデン・トパーズ』では窓に挟まっていたり、『アップル・エメラルド』ではレジの横に投げられていたり『スマイル・クリスタル』では隣の部屋だった。そのたびに[怪盗Yまたもしっぱい]や[怪盗Yおつかれのようで]とか[怪盗Y逆に凄いぞ!]や[怪盗Yはおっちょこちょい?]などと書かれていた。その新聞は全て破り捨ててもモヤモヤしたのでカードの裏に《怪盗Yをからかうな》と書いておいた。
 宝石ばかり盗んでいたのは最初に怪盗の盗みを見たのが宝石だったからだ。気分を変えて次のターゲットは『黄金のロープ』にした。盗みに行ったらそこには警備員がいた。それでも優美はさくっと盗み出し、カードを投げようとすると
「誰だ!」
と警備員が入ってきた。びっくりした優美は警備員の方にカードを投げてしまった。
「ぐわー!」
カードが警備員の顔にヒットし、叫んでいるうちに優美は逃げた。
 次の日の新聞には[怪盗Y新聞を読んでいた!]や[怪盗Yはからかわれたくないらしい]と書かれていた。少しからかわれているが優美は嬉しくて次もがんばろうと思った。(カードは変な所に投げてしまうけどね☆)