「ルックの冒険物語」という本が本棚で泣いていた。僕を本屋で買ったのに夏休みが終わったら本棚の奥にいれられる。僕は本当に嫌だった。特に本を開いたまま伏せてきたり、大切に使ってくれないことが本当に我慢できなかった。僕は太郎の家から家出した。僕がいなくたっていい、もっと大事に使ってくれる人のところに行きたい、そう思った。外の世界に行くと車にひかれそうになったりしてこわかった。でも必死になって歩き進んだ。太郎の家から50キロメートルぐらい歩き一人の女の子が拾ってくれた。名前は理恵ちゃん、理恵ちゃんが拾ってくれた。僕は本当に嬉しかった。やっと大切にしてくれる子を見つけた。理恵ちゃんの家にはたくさんの本があった。僕を学校に持って行ってくれたり、きれいに本棚に並べてくれたり嬉しかった。でも、理恵ちゃんが夕ご飯を食べに行った時、僕は少し寂しくなった。太郎の家は必ず家に誰かがいて、必ずにぎやかな話し声やテレビの音、生活の音が聞こえる。理恵ちゃんの家は誰もいなくていつも静かだった。だから心の底で少し寂しい気持ちがあった。
ある日、理恵ちゃんが隣町に引っ越すことになった。その時にいろいろなものが捨てられた。僕も捨てられた。僕はごみ袋から抜け出して冒険に出た。カフェやスーパーマーケット、いろんなところに冒険に行った。たどり着いたのは図書館、図書館にはいっぱい本が並んでいた。そこには太郎や理恵ちゃんの家で見た本もあった。僕は考えた、いっぱい考えた。「太郎の家に戻ろう」やっぱり太郎が一番好き。大切に使ってくれないかもしれないけど太郎のそばがやっぱり一番落ち着く。僕は必死になって歩き進んだ。だが、太郎の家は更地になっていた。どうしてだろう。その時看板にはこう書いてあった。売地。太郎は引っ越したんだ。僕は泣いた。太郎に会いたい、心の底から思った。そうだ、太郎の学校に行けばいるかもしれない。僕は疲れていた足を引きずり、ようやく学校までたどり着いた。たしか太郎のクラスは、4年B組2階まで頑張って階段を上りやっとのことでたどり着いた。おそるおそるのぞくと、よく太郎の部屋にゲームをしに来る友達がいた。その子は僕のことを知っており、僕を見ると声をかけてくれた。すると「なんだ太郎の本じゃないか。太郎なら1週間前に引っ越したぞ、なんでこの本があるんだ」太郎の友達は引き出しに僕をしまった。授業が終わり帰りの時間、僕をランドセルに入れて太郎の友達は僕を家に連れていってくれた。
それから2週間後の土日、太郎の友達は僕を手提げかばんに入れて車で40分、きれいな白い家に連れてってくれた。僕はどこだろうと思った。また捨てられてしまうのかなぁと思いながらきれいな白い家に入ると、太郎がいた。太郎だ、太郎のところに連れてってくれたんだ。それから太郎と一緒に楽しく暮らした。