それはある、三月の終わりごろのことだった。小学五年生のあかねは一人っ子だった。自分の周りには兄弟のいる子がたくさんいたが、あかねはなんでもひとりじめだからうらやましいと思うことはなかった。むしろ兄弟より一人の方がいいと思っていた。そんなある日、パパが帰りに真けんな顔つきで、
「ちょっとはなしたいことがある。」
と言い、あかねと同じくらいの女の子がいた。
「こんにちは。パパのゆい言でここに来ました。つぼみと申します。」
どうもはなしを聞くと、パパの兄が死んでしまい、兄のゆい言であかねのパパに引きとられたらしい。そのことを聞いてパパとママはあかねが納得したと思い、ひとまず場の空気はなごんだ。だが、あかねはある、自分にとって、とてもやっかいなことに気づいた。
(え?私とあの子が姉妹になった?)
あかねはひとまず、空気をよんで、小さくほほえんだ。
つぼみが家に来て数日。事件がおこった。あかねが勉強していると、つぼみがあかねの大切な人形にさわった。あかねは目にもとまらぬ速さでつぼみの手を振りはらい、
「あんまりなれなれしくさわらないで!」
とさけんだ。もうつぼみとは兄弟だと分かっていたがどうしても他人だと思ってしまう。するとつぼみが妹みたいに泣きじゃくってママのところへ行った。ママにしかられた。帰って来たパパにもおこられた。なぜかさわったつぼみにはおこらずに、あかねをせめた。
「もうこんなのがまんできない!」
そうさけんであかねは家を出た。エネルギー全開で走った。太陽は西へ西へとかたむき、あかねは東へ東へと走った。
どれくらい走ったのだろうか。あかねはあせとなみだで顔がびちょびちょになっていた。気がつくと目の前にあせでびちょびちょになっていたつぼみがいた。空白の数秒間、二人は相手の目と目を見つめあっていた。
「いったい私のどこがいやなの?」
と、つぼみか問うと、
「私は一人が良かった。だがら全部いや!」
とあかねは本音をぶちまけた。すると、つぼみがとつぜん、木の下を手であなをほりはじめた。あかねがおどろいていると、
「なくなったパパとよくやったの。いやなことは土に言っちゃってうめちゃおうって。またパパとやりたいな…。」
するとまっさきにあかねが
「ずーと一人でいたかったー。一人じめしたいー。何で兄弟なんかできんの⁉」と土に向かってさけんだ。するとつぼみも
「パパと一生くらしたかったー!」
とさけんだ。すると心の底から笑いがこみ上がって、二人とも笑った。するとつぼみが、
「絶対開けちゃだめだよ。」
といいました。するとあかねもうなずいた。二人は笑いながら、地平線にさしかかった太陽を見て、家へと帰って行きました。